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頼れるtoto

K賀にかぎらず、ファーストステージでのAントラーズの快進撃には、伏兵の活躍が多いと言われる。 私には伏兵という意識はまったくない。
全員が同じように高い意識レベルを実現し、チームへの貢献意識を高めた結果なのである。 実際、そのとおりにAルシンドは長いドリブルのあと、そのままゴールを狙ってきた。
そのシュートはゴールからはずれ、得点にはならなかったのだ。 私はこのとき、Aルシンドに「自分ひとりだけでサッカーをするな」と怒鳴った。
試合まえのミーティングで、私はかならず選手たちにその試合の戦略を確認するだけではなく、チームプレーの重要性を意識させている。 パスをうまく、正確につなぐことや、チャンスはお互いに協力し合って、けっして無駄にしないことなどを試合のたびごとにくり返し注意している。
を決めた。 この時点ですでに5対0。鹿島の圧勝は、ほぼ予想されていた。
その後も、鹿島のムードで試合は進み、けっして攻撃の手を緩めない、すばらしい試合内容だった。 ところが、そんな試合展開のなか、私にはAルシンドの行動が目につきはじめてきた。
自分ひとりでボールを持つ場面が多くなってきていたからである。 それにもかかわらず、チームを引っ張って試合を進めていくべき選手であるAルシンドが、自分の活躍にばかり気をとられ、チームの一員であることを忘どんなに大差の勝利でも、どんなにその試合で活躍した選手でも、チャンスを生かさずに自分勝手なプレーをしたのであれば、私は見逃すことなどしない。

そのたびごとに、かならず怒ってきた。 実力のある選手がよく陥るワナは、スタンドプレーをするようになることだ。
パスをしないで、自分ひとりだけでゴールを狙った、格好良くゴールを決めようと無理な体勢からシュートを狙う主フになるのである。 そんなゴールは難しく、得点になど結びつかないことがほとんどだ。
それにもかかわらず、選手たちは自分の活躍のためにそんなプレーをしたがる結果は五対0のまま鹿島の圧勝に終わった。 Aルシンドがひとりでボールを持たずにパスを出せば、もう1点は確実にものにできる場面だ。
私が世界の桧舞台で活躍できたのは、試合に出場している私以外の10人の選手たちの素晴らしい活躍と協力があったからだ。 その素晴らしい選手たちの存在なしに、私自身のいい点を引き出すことなど不可能だったし、現在も歴史に残っているようなすばらしいプレーを語ることなどできない。
ましてやスターとして扱われることなどなかったにちがいない。 忘れもしないデビュー戦でのことだ。
試合開始直後にゴール前にいた私にボールがまわってきた。 無理してシュートできないことはなかったが、目の片隅にチラリと味方の選手が見えた。
私は頭でちょこんと合わせ、敵の裏にボールを出した。 今でも得意にしているプレーである。

そこへ味方が走り込み、先取点坐皇奪うことができた。 このプレーで私はラクになった。
あのとき、パスを出さずに自分からシュートを狙いにいったら、状況はもっと違ったものになっていただろう。 ブラジルやアルゼンチンなどの南米のチームは、一流の個人技を持った技術力の高い選手を多く輩出している。
そんな選手が集まっているから、南米のチームが強いと思っている人も多くいるにちがいない。 もちろん、個人の能力は重要である。
それ以上に勝敗を分ける大きな要因となるのはチームワークだ。 高度な個人技を生かすためには、その力を発揮しやすい状況を作らなければならない。
他のチームメイトが協力して状況を作ってくれるから、個人技も冴えるのだ。 南米チームの個人技が目立つのは、そのようなチームのアシストがあるからなのである。
私が鹿島Aントラーズというひとつの組織をまとめ、指導し、強くするために重視してきたこともこのチームワークの強化だ。 徹底させるためには、すこしでも乱す選手がいたら、どんなに人気のあるスター選手であろうと同じように怒る。
自分が組織の一員であることを徹底的に理解させる。 そしカン違いしないでほしい。
私が「チームワークを第一に考えろ」と言うのは、ひとりひとりの個性を殺したり、自分の考えを押し殺したりしろと言っているわけではない。 私はけっして個人が目立つことがいけないと思っているのではない。
活躍して目立った選手が出ることは悪いことではないのだ。 試合で活躍した選手が、それだけの評価を受けるのは当たり前のことだ。
正当な評価は、その選手にだけでなく他の選手たちの励みにもなる。 自分もチームのために活躍すれば、監督や他の選手、雛ポーターたちの評価を受けることができると、やる気を起こさせることができるのだ。

南米の選手の華麗な個人技が目立つのは、ひとりひとりが勝手にプレーしているからではなく、チームワークの中で自分の役割分担をきちんとこなしている結果にすぎない。 ドリブルに自分の持ち味があるなら、ドリブルでボールを運び、パスがうまい選手は絶妙のパスでチャンスを作る。
当然のことはうまくいったとき、そのプレーヤーは賞賛の対象になる。 私が言いたいのは、そのような自分の得意のプレーをするときに、無理に自分だけでプレーしてチームのチャンスの芽を摘むなということである。
また、自分がいい仕事をしたときも、自分ひとりがやった結果ではなく、チームメイトがうまくサポートしてくれた結果だということも忘れてはならない。 試合後のヒーローIンタービューでも、「自分が活躍できたのはみんなのおかげです」「00くんからのいいパスがあったから、自分はただ蹴り込んだだけです」と、チームメイトの陰の功績を讃えられる選手であるのがふつうだ。
そのようなチーム意識があれば、目立つ活躍をして、注目され、アイドルになっても構わないと私は思う。 チームのためになるのなら、素晴らしいことだ。
私がAルシンドを怒ったのも、彼ばかりが得点して目立ったからではない。 とくに、日本人選手の場合、チームワークを重視するのはいいのだが、ともすると消極的なプレーにつながる傾向がある。
チームワーク重視は、個を殺すことではないということをまず理解させなければならない。 チームのために自分の個性を十分に発揮できる選手が多いほど、そのチームは強くなる。
私は、そういうチーム作りを目指してきたのである。 チームの最終的な目的は、もちろん勝つことである。
そのために、自分の技術を駆使することはけっして悪いことではない。 それどころか、ドリブルのうまい選手、パスの巧みな選手、ゴール前での競り合いに強い選手、ヘディングの得意な選手など、個性ある選手を揃えたほうがチームとして強さを発揮できる。

だから、チームワークを基本に置いた個性の発揮には、私は最大級の賛辞らである。 Aルシンドの役割は点を取ることだから、いくら点を取っても私は賞賛こそすれ非難することはない。
私が怒ったのは、パスをすれば簡単に点が取れる状況なのにパスをせず自分でゴールを狙い、チームのチャンスを潰してしまったか近代サッカーの中で、戦術面においてはどこのチームもそれほどの違いはない。 南米のチームであろうと、ヨ−ロッパのチームであろうと、Jリーグのチームであろうと、やっていることは似たようなものである。
にもかかわらず、チームの優劣ができてしまうのは、その戦術をどこまで効果的に、どこまで確実に実行できるかの差だ。

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